BPDは、親密になることを望み、同時に見捨てられることを怖れる。BPDの核となるのはこの見捨てられ不安と、それによる感情の不安定だ。
診断基準(DSM-5)
対人関係、自己像、感情などの不安定性及び著しい衝動性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる、以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。
- 現実に、または想像の中で、見捨てられることを避けようとするなりふり構わない努力(注:基準5で取り上げられる自殺行為または、自傷行為は含めないこと)
- 理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係の様式
- 同一性の混乱:著明で持続的に不安定な自己像または自己意識
- 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、過食)(注:基準5で取り上げられる自殺行為または自傷行為は含めないこと)
- 自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し
- 顕著な気分反応性による感情の不安定性(例:通常は2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い不快気分、いらただしさ、または不安)
- 慢性的な空虚感
- 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかを繰り返す)
- 一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離症状
日本精神医学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』(医学書院,2014)p.654より引用
対人関係に関連した診断基準の1と2は、BPD患者が他人と親密になりたいと強く望みながら、「見捨てられる」のを同じくらい恐れるという、一見矛盾した奇妙な対人関係について述べたものです。
他人に対する理想化から価値下げへの態度変更は、「見捨てられた」と感じた際に、しばしば急激に生じますから、対人関係は不安定で激しいものとなってしまうのです。
人間は他人と親密になりたいと望むのは当然です。
従ってBPDの対人関係の特徴は、「拒絶される」「見捨てられる」ことに対する恐れだということになります。
ただしBPD患者が語る「見捨てられ」や「拒絶」は、些細に見えるような、予想外の出来事の積み重ねなのです。
それは〈物〉ではなく〈人〉との関係で起こりやすいことも覚えておいてください。
相手の表情,口調,視線の予想外の変化など、一見小さな出来事の数々が、患者にとって大きな苦痛が生じるきっかけになってしまいます。
それは「大切な相手」であるとは限りません。
初めて会った店員が挨拶をしてくれなかったといった状況でも、BPD患者が絶望し大騒ぎする引き金となります。
*「治療者と家族のための 境界性パーソナリティ障害治療ガイド」 黒田章史(岩崎学術出版社)より
BPDの感情の不安定化は些細なことがきっかけで起こるので、なぜ怒り出したり拒絶をはじめたのかがわからない。直接の攻撃をせずダンマリにでてしまうタイプだと、強い親愛を示していたところから突然豹変し音信不通になるので何も分からず、自分を責めることも出来ず途方に暮れるしかなくなる。怒りが表に出て暴力や暴言に出る典型タイプもつらいが、ダンマリやねちねち間接的に攻撃をするタイプもつらい。
しかも、怒りをぶつけたり不安定化するのは、特定の相手が対象とは限らない。
突然店員相手にキレる客は時折いるようだが、その中にBPDの人は高確率で含まれるのかも知れない。
赤の他人にキレているBPDへの接し方も家族やパートナーは学ぶ必要があるだろう。
多くの場合、BPDの感情不安定はBPDが些細なことに異常な敏感性をもったり、そもそもが妄想によったりするので、怒りをぶつけられる等のことがあっても、自分自身を責める必要は無いはずだ。BPDの家族のための本などを読むと、そのことはよく強調されている。BPDに振り回されて疲弊し、病んでしまうことがもっともよくない。いくら頑張っても当事者だけで適切な対応ができるものではないから、パートナーならいったん離れることも考えた方がいいのだろう。
BPDな人に悩み苦しむ人は、家族のためのいくつかの本に目を通すべきだ。
(この所、このブログに検索でたどり着いてご覧になっている方が少し増えてきたようだ。あまり有用な情報を提供は出来ないが、わかることは出来るだけ書いてみたい)
