今振り返るBPD

BPDと思われる彼女について、彼女から離れて随分時間が経った。今思い出しても普通の人にはあり得ないような心の動き、変化、行動だったとつくづく思う。

自傷行動やそれを見せつけるような行為はなかったが(以前の職場の若い同僚は、リストカットし、その傷口を見せつけられたという)、ひたすら一貫せず支離滅裂とも言うべき思考と言動、突発的な激しい怒りの感情の表出、サディスティックな言動、愛情を希求する感情、しかし愛情がわからない故の愛情のモノマネ的行動等、普通の人にはないBPD特有の症状を間近に見ることになった。

解離性同一性障害を疑うような人格変化、些細なことでも屈服するまで怒り続ける異常性(家電や家具の些細な不具合で販売店の責任者を自宅に呼びつけるほどに怒る…同様な行動はかつての配偶者など多くの人にも繰り返された様子)は極めて目立ったし、愛情の伴わない多くの性行動、それに相反する性的快感への罪悪感? など矛盾のある行動・感情の目立った。

何故か自分から解離症状、記憶がおぼろげで思い出しにくい自分の過去、異常な日常の眠気と夜間の不眠などのBPDに見られる症状を自ら語ったりする一方で、自分は異常ではないと主張したりもする。精神科医である自分の知識に基づけば、自分がどのような状態であるか判断が付きそうなものだが、彼女の中でそれがどのように理解されているのかよくわからなかった。

当時BPDに関するものをいろいろとみて、症状としてあてはまるとかあてはまらないとか思ったものだが、今の視点で振り返ると、概ねあてはまるように思う。

時間が経ち、自分自身も細部の差異ではなく大きな特徴をいるなど、捉え方が変わってきたのだろう。

以下はMSDマニュアル家庭版のBPDのページからの引用。

 

境界性パーソナリティ障害の症状

境界性パーソナリティ障害の患者は、しばしば内心で感じているより安定しているようにみえます。

見捨てられることへの恐れ

境界性パーソナリティ障害の患者は見捨てられることを恐れますが、その理由の1つは孤独になりたくないからです。患者はときに自分がまったく存在しないように感じることがあり、これは自分を気づかってくれる他者がいない場合によくみられます。しばしば自分の内面を空虚に感じます。

この障害の患者は、見捨てられそうだと感じると一般に恐れを抱き、怒ります。例えば、自分にとって重要な人が約束に数分遅れたり、約束をキャンセルしたりするとパニック状態に陥ったり、激怒したりすることがあります。患者はこのような間違いが、自分とは関係のない事情ではなく、自分について相手がどのよう感じているかが原因であるとみなします。患者は約束がキャンセルされたのは、相手が自分を拒絶しており、自分が悪いからだと考えることがあります。その反応の強さは、患者の拒絶に対する敏感さを反映しています。

境界性パーソナリティ障害の患者は他者に共感し、思いやりをもつことができますが、それは必要な場合には相手が必ずそばにいると感じる場合に限られます。患者は親密な対人関係や他者への思いやりを望みますが、彼らにとっては安定した人間関係を維持することは困難です。患者は自分が親密に感じている相手がどのように振る舞うべきかについて非常に高い期待を抱いていることが多く、人間関係に関する感じ方が急激に、大きく変動することがあります。

怒り

境界性パーソナリティ障害の患者は自分の怒りをコントロールすることに困難があり、不適切で強い怒りを生じることがよくあります。患者は自分の怒りを痛烈な皮肉、嫌味、または怒りのこもった痛烈な批判で表現することがあります。無視されたり、見捨てられたりしたと感じることから、患者の怒りはしばしば親しい友人、恋人、家族、ときには医師に対して向けられます。

そのような怒りの爆発の後、患者はしばしば恥ずかしさや罪悪感を覚え、自分が悪い人間であるという感じ方を強めます。

変わりやすさ

境界性パーソナリティ障害の患者は、他者に対する見方を急激かつ劇的に変える傾向があります。例えば、関係の早期には、患者は相手を理想化し、多くの時間を一緒に過ごし、あらゆるものを共有します。突然、患者は相手が十分に気づかってくれないと感じ、幻滅します。そして相手をけなしたり、相手に怒ったりすることがあります。

あるときには愛情を強く求めていたのに、次の瞬間には不当な扱いを受けたことについて当然のごとく怒ることがあります。患者の態度は、他者が付き合ってくれる可能性と他者からの支えに対する患者の捉え方に基づいて変動します。支えられていると感じているときは無防備で、愛情を強く求めるけれども、脅かされたり、失望を感じさせられたりすると、怒りを抱き、他者を低く評価することがあります。

境界性パーソナリティ障害の患者は自己像も突然、劇的に変えることがあり、自分の目標、価値観、意見、職業、または友人を突然変えることで示されます。

気分の変化は通常数時間しか続かず、数日以上続くことはまれです。気分が変化するのは、この病気の患者が、人間関係での拒絶や批判の徴候に非常に敏感なためである可能性があります。

衝動的行動と自傷

境界性パーソナリティ障害患者の多くは衝動的に行動し、しばしば自傷行為に至ります。患者は賭け事や安全ではない性行為をしたり、過食や浪費、危険運転に走ったりするほか、物質使用障害を抱える場合があります。

自殺企図や自殺のほのめかし、また 自傷行為(例えば、自分の体を切ったり、焼いたりする)などの 自殺関連行動が非常によくみられます。このような自己破壊的行為の多くは死ぬことを意図したものではありませんが、このような患者では自殺リスクが一般集団より40倍高くなります。境界性パーソナリティ障害の患者のおよそ8~10%が自殺により死亡します。このような自己破壊的行為は、しばしば近しい人により拒絶されたこと、見捨てられたという思い込み、または近しい人への失望により引き起こされます。また患者は、自分が悪い人間であるという感情を表現するため、または自分が現実のものではないと感じたり、自分から切り離されていると感じたりする(解離といいます)場合に感じる能力を取り戻すために、自傷行為を行っている可能性があります。境界性パーソナリティ障害の患者はときに、苦痛な感情から気をそらすために自傷行為を行うことがあります。

その他の症状

境界性パーソナリティ障害の患者は、他者から自分が苦闘しているとみられるように、目標を達成しそうになったときに自らだめにすることがしばしばあります。例えば、卒業の直前に学校を退学したり、うまくいきそうな人間関係をだめにしたりすることがあります。

極度のストレスを感じると、短期的に妄想や精神病に似た症状(幻覚など)、解離の症状が現れることがあります。そのストレスは、通常は誰も自分を気遣ってくれないという感情(すなわち、見捨てられて孤独になった感情)や打ちひしがれた、無価値であるという感情により引き起こされます。 解離が起きると、現実感が感じられなくなったり(現実感消失といいます)、自分の体や思考から切り離された感覚がします(離人感といいます)。このような症状は一時的なものであり、通常は別個の病気と考えられるほど重度のものではありません。